World Rally Championship

Rally Report

Round 13

息詰まる接戦。最終戦日本はヒョンデに凱歌

WRCにラリージャパンが戻ってきた。北海道での最後の開催から12年…長い沈黙を破って復活したラリージャパンは2022年WRC最終戦としての開催だ。
開催地が北海道から愛知県と岐阜県となり、SSの路面もグラベルからターマックへ。さらに日本には珍しい高速コースだった北海道に対し、愛知、岐阜のステージは道幅が狭く曲がりくねった本州の典型的な山道。レッキを終えた多くのドライバーたちは極めて低速なコーナーが連続するSS、誰もが経験したことのないターマックのコースに驚きの声を漏らした。
ラリーはラグビーワールドカップも開催された豊田スタジアムにサービスパークを置き、デイ1は11月10日夜のSSS1を皮切りに豊田市や設楽町の奥深く分け入り、デイ2は新城市と岡崎市。そしてデイ3では愛知から岐阜まで足を伸ばす。
すでにドライバーはロバンペッラ、メーカーはトヨタとチャンピオンは決定しているが、トヨタにとって地元も地元。勝たないわけにはいかない。一方、シーズンを通してトヨタ最大のライバルだったヒョンデにとっても一矢報いたいラリー。フォードだけは遠隔地ということもあって直前に2台のエントリー取り消しがあり、トヨタ4台、ヒョンデ3台、フォード2台のラリー1がヨーロッパ外で初めてのターマックWRCに臨むことになった。
この中には愛知出身の勝田貴元が含まれているのは言うまでもないが、勝田以外にもかつて世界で戦った新井敏弘や勝田の父、勝田範彦もエントリーリストに名を連ねた。

地元トヨタ優勢の序盤戦

ラリーは大観衆が押し寄せた豊田スタジアムでの盛大なセレモニーの後、鞍ヶ池のSSS1で激戦の幕を開けた。公園内に設けられた顔見せ的なステージはトヨタのセバスチャン・オジェがベストタイム。0.1秒差でフォードのクレイグ・ブリーン、さらに0.1秒差でヒョンデのオイット・タナックと続く接戦だ。勝田は1.9秒差の7位。そしてその後方では今回はスバルからラリー2のシトロエンに乗り換えた新井敏弘が大クラッシュ。ステージは中断され、後続はSSS1を走らないまま豊田スタジアムに戻り、翌日からの戦いに備えることになる。
ドラマはこれで終わらなかった。11月12日最初のSS2ではロパンペッラが最速タイム。一方、後続のダニ・ソルドが乗るヒョンデi20Nラリー1が突如発火して炎上。これでステージは中断され、中断時間を取り戻すためにSS3がキャンセル。SS4ではトヨタのエルフィン・エバンスが最速タイムでヒョンデのティリー・ヌービルと首位を分け合うが、フォードのガス・グリーンスミスがクラッシュ。さらにステージ中に一般車が紛れ込んだとして赤旗中断。デイ1前半までラリー1はともかくラリー2以降はまともに走るチャンスもないままの進行となってしまった。
デイ1後半はグリーンスミスがクラッシュの際に安全バリアを壊したことでリピートとなるSS7がキャンセル。SS2か所のみの戦いとなったが、SS5ではエバンスが連続最速タイムで単独首位となり、SS6ではロバンペッラが最速。こうして波乱続きだったデイ1はエバンスが首位。3秒後方にヌービルがつけており、さらに2.1秒差でロバンペッラという接戦。日本期待の勝田は首位から20.6秒差の5位で終了している。
続くデイ2は前日と一転、スムースな進行となるが、トップグループでは熾烈な先頭争いが展開された。最初のSS8でラリーリーダーのエバンスが最速タイムを出して2位ヌービルとの差を広げるが、SS9では差が詰まる。一方、3位にいたロバンペッラはパンクで脱落。優勝争いのドライバーが絞られ始めた。SS10はタナックが最速タイムを奪いデイ2前半を終了した時点で首位エバンスと2位ヌービルの差は6.5秒だ。

ヒョンデの逆襲とトヨタの不運

わずかながらエバンスが差を広げ始めているかに見える展開だが、デイ2後半ではヌービルの逆襲が始まった。午後になるとヌービルはコンスタントにエバンスより速く、二つ目のSS12で逆転。この日の締めくくりとなる岡崎市内のSSSは2回走行が1回走行に変更されるが、ここでもヌービルはエバンスを上回り、デイ2を終えてその差は4秒。3位のタナックは約40秒後方だけに優勝争いは完全に二人に絞られた。タナックに続くのは勝田。SS9ではコースを外れてあわやの場面もあったが、前後のタイム差が開き、4位が見えてくる。
そして最終日の愛知から県境を越えて岐阜を走るデイ3。エバンスは地元トヨタに勝利をもたらすべく最初のSS15でヌービルとの差を0.6秒にまで縮める。逆転勝利は目の前かとも思われた矢先のSS16。様々な速度域の区間があり、さらに路面も千差万別という難しいこのSSでエバンスは痛恨のパンクから1分30秒以上をロス。これで勝負は決した。残り3つのSSでヌービルは余裕のクルージングで優勝。2位にはタナックが入り、ヒョンデは最大のライバル、トヨタのお膝元で1-2フィニッシュという大勝利を決めた。そして3位は勝田貴元。「目標は表彰台」と語っていた日本のエースはトヨタ勢でも最高位を得てシーズンを締めくくった。

ライター

川田輝(かわだあきら)

1960年生まれ
自動車雑誌の編集部員からオートテクニック、ラリーXプレスのジャーナリストになる。
アジアパシフィック選手権、PWRCのチームマネージャーを経てスズキWRTのチームマネージャーを務めた。
WRCは取材、チーム参戦で250戦ほど経験

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