World Rally Championship

Rally Report

Round 08

作戦的中でタナックがフィンランド人の牙城を攻略

世界に冠たるラリー王国

WRCにはいくつものクラシックイベントがあるが、ラリーフィンランドもそのひとつ。数十メートルのジャンプが連続する超高速戦であるとともに、ラリーで圧倒的な存在感を持つフィンランド人ドライバーたちのホームイベントである。この国ではラリードライバーが最高のスポーツ選手に見られるほど知名度や地位が高く、テレビCMにも頻繁に登場するのは、なるほどラリーが国技なのだと納得させられる。

ご存じの通りF1やWRCなどトップレベルで活躍するフィンランド人ドライバーは多いが、果たして何故なのか。ユハ・カンクネンやトミ・マキネン、そして現トヨタ監督であるヤリ-マティ・ラトバラらを見いだしたフィンランドラリー界のゴッドファーザー、ティモ・ヨキに聞いたことがある。

「農場の中や森の誰も来ないような道路で幼少の頃から運転を覚えるのがフィンランドだ。長い冬や良質なグラベル路面、これでラリードライバーにならない方がおかしくないか?」「個人主義の強いフィンランド人は団体競技では全くダメだ。一方で個人競技、それも道具を使う競技では優秀な選手が多い。これは内面的なものも大きいと思う。過酷なスカンジナビアの環境や国の成り立ちからフィンランド人はDNAの中に逆境に耐える粘り強さやガッツを持っている。そのメンタリティがラリー向きなのだろう」

たしかにフィンランドのドライバーは極度に興奮したり投げやりな態度になることは少ない。今年のチャンピオン候補がカッレ・ロバンペッラだが年齢を感じさせない落ち着きぶりである。今回のラリーフィンランドでも優勝候補の最右翼であり、速さはもちろんだが、不利な走行順でも気落ちすることなくタイムロスを最小限にとどめ、チャンスを待って勝利をものにする。まさにヨキの言葉通りの勝ちパターンである。

いつもの戦略と思わぬ展開

とはいえ、いかにロバンペッラでも出来ることに限度はある。フィンランドは走行順の有利不利が少ないイベントだが、それでも晴れていればダストが舞うグラベルであることに変わりは無く、初日デイ1のロバンペッラは今シーズンのパターンで先頭スタートから路面の掃除役となった。

一方、ロバンペッラが序盤に苦戦することを織り込んでラリーに臨んだのがトヨタで走る昨年優勝のエセッカ・ラッピと過去2勝しているヒュンダイのオイット・タナックだった。後方スタートの走行順を生かし、「カッレがハンディを負っているデイ1、それも1周目のループでどれだけ離せるかにかかっている」とタナックは語るが、その言葉通り、デイ1序盤はタナックとラッピが最速タイムを奪い合う。ロバンペッラはトップ3のタイムが出ないままラリーはタナックとラッピの先頭争いで進み、デイ1を終えて首位タナックに3.8秒差でラッピが続くことになった。3位エルフィン・エバンス、4位ロバンペッラと2〜4位はトヨタ勢が占め、ロバンペッラは首位から21秒遅れ。

通常のラリーであれば21秒は十分逆転可能な差だが、フィンランドは別名フィンランドグランプリとも呼ばれ、「フィンランドの1秒は他のラリーでの3秒」と言われるほど超高速の接近戦だ。この21秒の差はタイムロスを極力少なくしたかったロバンペッラにとってはかなり厳しいものに見えた。

タナックがライバルを抑えてフィンランド3勝目

続くデイ2は雨になるが走行順のハンディのなくなったロバンペッラは8つのステージ中5か所の最速タイムで追い上げ、エバンスを抜いて3位、そしてフロントガラスの破損で視界不良となったラッピを抜いて2位と順位を上げるが、大きなミスのないままデイ2を走りきった首位タナックとの差はまだ8.4秒もあった。

最終日デイ3に残されたステージ距離はわずか43km。そのダメ押しのようにデイ3最初のSS19でタナックはロバンペッラに1.9秒差とつける最速タイムで差を10.3秒に広げる。続くSS20はタナック、ロバンペッラが同タイムで差に変化はない。これでほぼ勝負はついた。同じステージをリピートする2ループ目のSS21でロバンペッラは最速だったが、タナックも0.3秒差で続き差は10秒。この差は最後のSS22で逆転できるものではなく、ロバンペッラは再び最速タイムを出すが、イタリアに続く今季2勝目となったタナックには6.8秒及ばなかった。

3位はデイ2で窓ガラスが破損し、デイ3でも転倒しながらからくも走りきったラッピ、4位エバンスとトヨタ勢が占めた。上位陣を占めるトヨタの地力もすごいが、今回の優勝は停滞気味だったヒョンデには明るい材料になるはずだ。とはいえWRCはすでに第8戦まで終了。選手権リーダーのロバンペッラが198ポイントなのに対し、選手権2位となったタナックは104ポイント。もはやロバンペッラのチャンピオン獲得は時間の問題となっている。

ライター

川田輝(かわだあきら)

1960年生まれ
自動車雑誌の編集部員からオートテクニック、ラリーXプレスのジャ
ーナリストになる。
アジアパシフィック選手権、PWRCのチームマネージャーを経てスズ
キWRTのチームマネージャーを務めた。
WRCは取材、チーム参戦で250戦ほど経験

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