World Rally Championship

Race Report

Round 04

ラリー・ポルトガル

逆境を乗り越えたロバンペッラに王者の風格

2022年WRC第4戦ポルトガルラリー。数少ないWRC創設以来のクラシックイベントは例年ヨーロッパラウンドのグラベルイベント緒戦として開催される。開幕戦モンテカルロ、続くスウェーデンは雪や氷など、ドライバーやマシン本来の速さとは次元の異なる複雑な要素が絡むラリ−。WRCはシーズン開幕4戦目にして初めてグラベルでの実力勝負となる。開催数でみればグラベル路面はWRCのマジョリティだけに、このラリーの展開はシーズンを占うのにも重要な意味を持っている。

グラベルといってもラリーによって路面は千差万別だが、その中でポルトガルは極端にラフでもなければスムースでもない平均的な路面だ。先頭に近いスタート順ほど路面の掃除役になってタイムを出しにくいのはグラベルラリーの常だが、砂地が多いポルトガルでは初日デイ1に先頭スタートだったドライバーが優勝したのは2017年のオジェが最後である。今回、その先頭スタートは選手権をリードするカッレ・ロバンペッラだ。

選手権ポイント上位からスタートする(=不利になる)このシステムがある以上、ポイント上位のドライバーは初日をなんとか凌いでタイムロスを最小限におさえ、2日目デイ2以降に同じ土俵で戦えるようにするしかないが、それは極めて難しいことである。

他のドライバーと戦う以前に砂の載った路面との戦いを強いられるロバンペッラ。序盤のタイムはトップグループからわずかに遅れる平凡なものだったが、走行順を考えれば大健闘であり、その遅れは致命的なものではなかった。同じステージをリピードするデイ1後半ではハンディも減り、2回のベストタイムで3位に浮上。さらにヒュンダイのティリー・ヌービルが後退したことから、彼は2位で初日を終えることになった。

デイ2でのロバンペッラはデイ1序盤から首位を行くエルフィン・エバンスと一進一退の攻防の末に抜き去り、最終日デイ3でも差を広げながら優勝。スウェーデンからの3連勝を飾ることになるが、今回のハイライトは首位奪取の瞬間や最終日の凱旋ドライブではなく、耐えながらもタイムロスを極力おさえたデイ1のドライビングにあった。派手には見えないが、真に強いドライバーだけが出来る芸当であり、今後の選手権でポイント上位のドライバーがグラベルラリーで直面する問題に対してのストレートな回答でもある。

条件が良いときに速く走ることは一定のスキルを持ったドライバーなら出来る。しかし条件が悪い中でタイムロスを最小限におさえながら勝機を見いだすのはチャンピオンに近いドライバーしかできない。弱冠21歳。童顔の彼が2戦続けての逆境の中、連勝を飾ったことには大きな意味がある。WRC はまだ4戦を終えただけだが、今年のシーズンはロバンペッラのものになりそうな雰囲気が漂いだしたのではないだろうか。

老兵は去るのみか

今回のラリーにはセバスチャン・ローブとセバスチャン・オジェが出場していた。王座を狙ってシーズンを戦っているわけではないが、開幕戦モンテカルロでこの2人が優勝争いを展開したことは記憶に新しい。それだけに今回もレギュラードライバーを差し置いて…という観測もあったし、私もその可能性はあると思っていた。二人はデイ1で有利な後方スタートであり、そこでトップ争いに絡めばデイ2以降も不利なスタート順になることはないからだ。

実際、ローブはSS4でベストタイムを出しラリーをリードすることになったのだが、続くSS5でコンクリートの壁をヒットしてリタイア。オジェもトップに数秒差の3位を守っていたが、スペアタイヤが1本しかないSS6で2本パンクして万事窮すとなってしまった。

翌日は二人とも再スタートしたが、先頭スタートになったローブはSS11でエンジンパワーが大幅にダウンしてしまいストップ。ローブ続く2番手を走っていたオジェは同じステージでコースアウトし撤退。最終日にローブは出走せず、オジェは先頭スタートで苦しい走行のまま走りきるが、総合51位という結果にとどまった。

どちらのドライバーにとっても散々なラリーだったわけだが、ローブはリタイアまでラリーをリードし、オジェも不利な先頭スタートながら5番手前後のタイムを出しており、これはロバンペッラの初日に匹敵する。この二人、まだまだ終わっていないのである。今回は単に巡り合わせが良くなかったとも言える。次に彼らが出場するのは第6戦サファリの可能性が高いが、このまま世代交代を許すのか、オヤジの意地を見せるのか注目したい。

表彰台目前! 勝田の健闘

今回の勝田貴元はめざましい走りを見せた。スピンやリカバリーの手間取りあり、実力での3番手タイムの連発ありで、デイ1からデイ3までベテランのダニエル・ソルドと繰り広げた3位争いは目が離せないものだった。最終日こそプッシュするソルドに僅差で表彰台を譲ることになったが、転がり込んできた3位より、争い続けた末の4位は重みがある。これまで完走のために耐える戦いの多かった勝田が、ラリーを通してポジションを争い続けたのは大きな飛躍であり、激しい争いの緊張の中で間違いなく彼は覚醒したはずだ。ロバンペッラ同様に次のイベントが楽しみである。

ライター

川田輝(かわだあきら)

1960年生まれ
自動車雑誌の編集部員からオートテクニック、ラリーXプレスの
ジャーナリストになる。
アジアパシフィック選手権、PWRCのチームマネージャーを経て
スズキWRTのチームマネージャーを務めた。
WRCは取材、チーム参戦で250戦ほど経験

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