World Rally Championship

Race Report

Round 05

ラリー・イタリア サルディニア

サルディニア開催はイタリアならでは?

熱狂という面において、イタリアを上回る国はそうそうない。そのイタリアでのWRCは地中海に浮かぶサルディニア島で開催されるが、20年前までイタリアのWRCといえば本土のサンレモラリーだった。音楽祭や映画祭でも名高いイタリアのリゾート地、サンレモをスタート&ゴールにトスカーナまで足を伸ばす雄大なラリーだったが、サルディニアに開催地が移った理由はラリーの人気がありすぎたからという笑えない話を聞かされたことがある。

当時、WRCは安全面をはじめ様々な改革に取り組んでいたが、サンレモの悩みは手に負えない数の観客だった。コースとなった道路脇の観戦場所は早い時間、下手をすると前夜から人が溢れ、次から次にやってくる観客にはもはや安全な観戦場所は残されていない。その結果、観客がコース脇、時にはコース上まで溢れることになる。主催者はラリーを週末ではなく全日程を平日に開催するなどの手を打つが、それでも道路に溢れた観客のために競技が中断されることが間々あった。

できれば有料化してチケット枚数などで制限したかったようだが、イタリアは公道のイベントを有料にすることは出来ないのだという。開催地変更には様々な理由があると思うが、イタリアの場合はあまりにも熱狂的な観客対策が大きな理由のひとつだったのである。

 

選手権リーダー泣かせのイベント

そのサルディニアだが、選手権上位の選手には攻略の難しいラリーである。というのはサルディニアのグラベル路面は柔らかい土と砂が積もり、場所によってはタイヤがすっぽり埋まるような深いダストに覆われている。そんな路面だから先頭スタートのグループは果てしなく路面を掃除する羽目になり、良いタイムは期待できない。

スタート順の有利不利はグラベルラリーではある程度宿命的であり、前戦のポルトガルもその傾向はあったが、サルディニアはシーズン中もっとも有利不利がはっきりしているグラベルラリーだ。それだけに破竹の快進撃を続けてきたトヨタのハリ・ロバンペッラにとってもこのラリーは正念場だった。

選手権のポイント順にスタートする初日デイ1は先頭スタートのロバンペッラにとって厳しい戦いになるのは分かっているが、なんとか凌いで上位につければデイ1成績下位からのスタートになる2日目デイ2では挽回も可能。実際、ポルトガルではその教科書通りの戦いを見せたのがロバンペッラだが、今回のサルディニアの路面のダストは度を超えていた。

滑りやすい路面に苦戦して6番手前後を走行していた彼は午前中後半にコース脇にぶつけてリアウイングを失い、安定しないマシンで8位に後退。デイ2のスタート順位が掛かった午後のリピートステージでの挽回が必要だったが、今度はタイヤ選択を誤り、10番手以内のタイムが出ない状況となってしまった。この時点で首位にいるトヨタのエサペッカ・ラッピから1分30秒以上の遅れ。万事窮すである。

 

運を味方につけたタナックの勝利

一方、今シーズン様々な不運の巡り合わせで選手権下位に沈んでいたヒョンデのオイット・タナックには運が巡ってきていた。デイ1を後方からスタートしたことでラッピと首位を争った彼は、デイ1後半のリピートステージに入ったSS7でトランスミッションのトラブルから3輪駆動となってしまう。毎回スピードこそ見せるがマシントラブルが多いヒョンデ…またしてもと思われたが、その直後のSS8とSS9は1回目の走行でリタイアした車の撤去が出来ずにキャンセルとなり、デイ1はそのまま終了。タナックは大きなロスがないままラッピに0.7秒差でデイ1を終わることになった。

そしてデイ2開始早々にラッピはコースアウトしてタナックが首位を奪還。2位にはフォードのクレイグ・ブリーンが上がるが、連続して最速タイムを出すタナックはデイ2を終えてブリーンに46秒の差をつけていた。3位につけるヒョンデのダニエル・ソルドはさらに21秒差。4位のルーベ、5位まで上がってきたロバンペッラも間隔が開き、40kmに満たない最終日デイ3で順位の変動は起きそうにない。

無理をしても前の車に追いつける可能性は低いだけに、デイ3では各車ともポジションを上げることよりパワーステージでのポイント獲得が眼目となる。この日はサービスでのタイヤ交換が認められないだけに、タイヤを減らさずに温存し、パワーステージに全力を注ぐことが選手権を考えれば得策だ。

消化試合になったような3つのステージの後の最終パワーステージ。誰もが全力でポイント獲得を目指したこのステージを最速タイムで走り抜けたのはヒョンデのティエリー・ヌービルだった。2番手タイムはロバンペッラ。ラリー序盤を先頭、そして2番手でスタートしたドライバーたちが期せずしてボーナスポイントを獲得したことになる。ただし、トップグループの順位が入れ替わることはなかった。

クロアチアでは最後にロバンペッラの逆転を許したタナックは1年ぶりのWRC優勝を達成。ヒョンデはタナックの優勝とソルドの3位でトヨタとのマニュファクチュアラーポイントの差を詰めてきた。一方、ドライバーズ選手権は苦戦したロバンペッラが5位でフィニッシュしたことで選手権2位のヌービルとの差をさらに開いて独走態勢となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

ライター

川田輝(かわだあきら)

1960年生まれ
自動車雑誌の編集部員からオートテクニック、ラリーXプレスの
ジャーナリストになる。
アジアパシフィック選手権、PWRCのチームマネージャーを経て
スズキWRTのチームマネージャーを務めた。
WRCは取材、チーム参戦で250戦ほど経験

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