World Rally Championship

Race Report

Round 09

ローカルヒーローの悲劇もヒョンデ2連勝

絶妙なタイミングでWRC開催のクラシックイベント

Covid-19の感染拡大によって2020年から大幅なスケジュール変更が続いたWRCだが、イープルはその間隙を縫ってWRC昇格を決めた。

1990年代後半に初めてこのラリーを見学した時、熱狂的な地元の支援に驚いたものだ。50年以上の歴史を持ち、主催者の質の高さは平均的なWRCのレベルを上回るイープルが長くヨーロッパ選手権でとどまっていたのは、WRCとしては短い走行距離や大きなマーケットに挟まれたベルギーという事情があるのだと思う。

ところがパンデミックによってラリーのキャンセルが相次ぎ、代替イベントとして名乗りをあげたことでイープルのWRC昇格が決定。2020年はベルギーも感染拡大があり開催中止せざるを得なかったが、2021年には晴れてWRCとしての開催が実現した。

そのイープルのステージは通常のターマックラリーのイメージからはかけ離れたものだ。開催される平野のフランドル地方に山間部のワインディングロードはなく、畑の中を縫う直線と交差点を組み合わせたような道路がメインになる。道路脇は舗装されておらず、コーナーは内側も外側もダストが積もっているなど極めて特異な性格を持つだけにヨーロッパ選手権時代から地元のドライバーが強く、WRC初年度もヒョンデのエースである地元のヒーロー、ティリー・ヌービルが優勝を飾っている。

ヒョンデとトヨタの明と暗

今年も優勝候補の最右翼はヌービルだが、デイ1最初のSSで彼は出遅れる。今回の結果次第ではチャンピオンが決まるトヨタのカッレ・ロバンペッラがラリーをリード、チームメイトのエルフィン・エバンスが続き、トヨタ優勢に思えたSS1だが、直後のSS2でロバンペッラがコースから飛び出し転倒。大きく破損したマシンでデイリタイアとなってしまう波乱が起きた。

代わって首位はエバンスだが、デイ1後半には前戦フィンランド優勝のオイット・タナック、ヌービルのヒョンデ勢が猛追。SS7でエバンスは陥落され、デイ1後半で4連続最速タイムをたたき出したヌービルが首位、タナックが2位とヒョンデ勢が1−2体制。エバンス3位、エサペッカ・ラッピが4位とトヨタ勢が続き、5位にフォードのクレイグ・ブリーンがつけた。

デイ2はラリー最長の133.22km/8SS。果たしてヒョンデ勢が圧倒するのか、トヨタが巻き返すのか注目されるが、最初のSS9でタナックがヌービルを逆転して首位を奪取。しかし前日のやや不利な路面状況でも健闘したヌービルの速さはこの日も揺るぎなかった。SS11の最速タイムで首位を奪い返すとSS12でも圧倒的なタイムで2位以下に15秒以上の差をつけてデイ2前半を終える。

そのヌービルはデイ2後半のSS13でも最速。SS14では慎重に走りながら4番手タイムと首位固め。イープル2連勝に向けてラリーをコントロールしているかに見えた。ところがSS15の低速コーナーで一瞬のアンダーステアが出た。不意打ちのようなマシンの挙動に反応する間もなくあえなくコースアウト。観客の助けでコースに戻るが、サスペンションが壊れてしまっており、ここでヌービルは続行を諦めなければならなくなってしまった。

これで首位はタナックとなる。彼はすぐ後ろにいるエバンスとの差をなんとか開こうとデイ2最後のSS15、SS16と連続して最速タイムを出して8.2秒差でデイ2を終えた。3位はラッピがつけるが、すでにトップ2台から1分遅れており、最終日デイ3の優勝争いはタナックとエバンスに絞られた。

秒差の攻防を制しタナックが2連勝

イープルのデイ3はわずか51kmという短いステージ距離。そこで首位タナックと2位エバンスの8.2秒差はどんな意味を持つのか。両者になにも起こらなければこの差は逆転が難しいが、一瞬のミスで簡単にひっくり返ってしまう差でもある。それだけにエバンスはタナックにプレッシャーをかけ続ける必要があった。

最初のSS17でエバンスは最速タイム。しかしタナックも僅差の2番手タイムで続き1秒しか縮まらない。続くSS18でもエバンスは最速。しかしタナックも0.4秒差と綱渡りのようなタイムの応酬が続いた。デイ3前半を終えて差は6.7秒。エバンスには時間切れが迫っている。

そしてSS17のリピートとなるSS19でタナックがダメ押しの最速タイム。これで7.2秒差。パワーステージとなる最終SS20では優勝が掛かったタナックはもう急ぐことなく、2番手タイムで差を詰めてきたエバンスに5秒差を守り切り、フィンランドに続く2連勝を決めた。

エバンスはデイ1でタイムコントールに遅着して受けた10秒のペナルティが重いものとなったが、これもラリー。3位にはフィンランドに続きラッピが入り、4位にはキャリア最高位となるペター・ソルベルグの息子、オリバー。5位にラリーを通してマシンの不調に耐えた勝田貴元が入った。
選手権リーダーのロバンペッラはデイ1の大クラッシュにも関わらずチームがマシンを修復。デイ2以降も走り続け、スペアタイヤ無しの軽量化を敢行してパワーステージで最速タイム。ポイントを203として2位に浮上したタナックに72ポイントの差をつけた。今回は足踏みだったが、彼の王座獲得も秒読みになってきている。

ライター

川田輝(かわだあきら)

1960年生まれ
自動車雑誌の編集部員からオートテクニック、ラリーXプレスのジャーナリストになる。
アジアパシフィック選手権、PWRCのチームマネージャーを経てスズキWRTのチームマネージャーを務めた。
WRCは取材、チーム参戦で250戦ほど経験

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