Creating for Tomorrow

<第2回>次世代コンセプトカー【AKXY2】次の時代を見据えながらこれまでの枠組みを超えて、車の新しい価値を提案する取り組みをご紹介します。

2022/05/13

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3代目の“AKXY2”が提案する次世代Satisfactionとは?

旭化成が次世代の車を丸ごと1台提案するコンセプトモデル・プロジェクト、3代目となる“AKXY2”は2022年5月25日から横浜とオンラインで開催される「人とくるまのテクノロジー展」でデビューします。本特集第2回は、“AKXY2”のコンセプトを構成する3つのS(Society, Satisfaction, Sustainability)からSatisfactionにフォーカス。“AKXY2”に搭載されている旭化成製品の中でSatisfactionに貢献する代表例として「PTTカーマット」と「メフ®[ビーズ]」をピックアップします。それぞれの特徴や魅力を活かして“AKXY2”で表現するSatisfactionとは… 旭化成アドバンス株式会社 車両資材事業部の関透、モビリティ&インダストリアル事業本部 機能材料事業部 フォーム製品営業部の中村充利と、第1回から引き続きモビリティ戦略推進室の本庄崇文に聞きます。

旭化成の製品や活用方法に関するお問い合わせはこちらのフォームよりご連絡ください。

▲左から、モビリティ&インダストリアル事業本部 機能材料事業部 フォーム製品営業部 中村充利、モビリティ戦略推進室 本庄崇文、旭化成アドバンス株式会社 繊維本部 車両資材事業部 事業部長 関透

人がクルマに求めるSatisfactionは止まらない

本庄「AKXY2がご提案するコンセプト『3つのS(Sustainability, Satisfaction, Society)』は、これから車の価値を高めるために大事であろうと私たちが考えているテーマです。その中でSatisfactionは、車を使ったときの満足感を表します。それは何か一つのことではなく、音や温度、手に触れるもの、目にする景色など、人が車に乗っているときに体験する全ての満足感が関わっています。もっと乗り心地良く、もっといい音を聞けるようにと、より高いSatisfactionを求める気持ちは、きっと世の中が変わっても電動化やサステナビリティと言われても、止まることなく続いていくと思います。

AKXY2に載せている製品でSatisfactionに関連するものは多々あるのですが、旭化成のコンセプトモデルは実際に乗って触って体験していただけることを代々大事にしているので、手が触れたり足で踏んだり腰掛けたり、直接的に快適性や満足感を味わっていただける製品の代表として、PTTカーマットとメフ®[ビーズ]を今回ご紹介します」

■Satisfaction製品例01 PTTカーマット

触り心地よく清潔に使える、期待のサステナブルカーマット

▲旭化成アドバンス株式会社 繊維本部 車両資材事業部 事業部長 関透

関「PTTカーマットは、高性能ポリマーPTT (Poly Trimethylene Terephthalate)から生産したモノフィラメント糸*を使っています。1つ目の特徴は、従来のポリプロピレンやナイロンといった素材のカーマットと比べて形態回復性が高いことです。手触りがすごくやわらかく、クッション性があります。(*シャツなどアパレルに通常使われるのは、複数の糸を撚っているマルチフィラメント糸。モノフィラメント糸は1本の糸でできている)

2つ目の特徴は、防汚性です。ポリプロピレンやナイロンのカーマットに比べて汚れがつきにくく、汚れがついてもすぐに取れます。繊維のすき間に染み込みやすい液体をこぼしてしまっても、サッと拭くだけで落とせます。メンテナンスが楽で長持ちし、室内をいつもクリーンな環境にして快適に過ごしていただけます。

3つ目の特徴は、環境への負荷が少なくサステナビリティに貢献する素材であることです。材料の37%がトウモロコシ由来の原料で、普段食べずに捨ててしまう部分も使われています。糸を製造する時に消費するエネルギーでは、ナイロン製に比べて電力は30%少なく、二酸化炭素の排出量は63%も少ないです」

▲PTTカーマットの写真。PTTモノフィラメント糸を作る技術は旭化成が特許を取得している。
https://asahi-kasei-mobility.com/products/ptt_mat/

▲赤ワインを使った汚れ落ち試験を実施。左がNylon6、右がPTT。汚れ落ちに優れ、車内を綺麗に保つことができる。(一般財団法人 ケケン試験認証センター 測定)

PTTカーマットだから実現したAKXY2のユニークなドアステップ

本庄「PTTカーマットは、初代のAKXYにも2代目AKXY PODにも載せているのですが、3代目のAKXY2では、走行方向に向かって前側の足を入れるところと、横側のドア部分で手前にバタンと開いてステップになるところの2箇所に載せています。AKXY2の室内には真ん中にぐるりと一周溝が切ってあって、溝を使っていろいろな機能が拡張できる仕掛けになっているのですが、PTTカーマットはドア側の溝にはめて使います。取り外してメンテナンスしたり、色違いやデザイン違いのものに付け替えたりできます」

▲展示する時のベーシックな状態。PTTカーマットはAKXY2では2箇所に載せられている。開くとステップになる部分は閉じると室内の内壁になり、防汚性に優れたPTTカーマットだから実現できたデザインといえる。

関「PTTカーマットの糸は、太さや長さを変えれば、やわらかさや風合いが変わります。実際に同素材の糸は有名ブランドの歯ブラシや化粧ブラシにも採用されていて、糸を細く毛足を長くした化粧ブラシは最高級の天然素材と比べても遜色ないほどのやわらかさです。

色のパターンは無限にあります。色とマットのカッティングの仕方で、デザインはいくらでも変えられます。寝転がれる絨毯のようなカーペットもできるので、ご要望に沿ってさまざまなものを実現していきたいですね。

PTTカーマットの課題はコストですが、これまでは快適性やサステナの観点から国内外の高級車に採用していただいていました。自動車の変革期に入り、世間のニーズがPTTカーマットに合致する風潮になってきたため、これからさまざまな車種での採用が増えていくのではないかと考えています」

▲PTTカーマットと同素材の糸でつくられた身近な製品例。人工芝など。

■Satisfaction製品例02メフ®【ビーズ】

次世代のクルマで極上のリラックスを実現する発泡ビーズ

▲モビリティ&インダストリアル事業本部 機能材料事業部 フォーム製品営業部 中村充利

本庄「車の中では座っている時間が一番長いので、座り心地の良さはクルマの満足度に大きく影響します。今回AKXY2では自動運転の世界を表現しているので、車のシートも従来ではあり得ないような全く違った形をした、もっと座り心地の良いものがあってもいいのではないかと考え、クッションシートを仕込みました。このクッションシートの中に詰められているのがメフ®【ビーズ】という素材です」

▲メフ®【ビーズ】。メフというネーミングは、Moldable(成形可能な)の頭文字MとpolyEthylene Foam(ポリエチレンの発泡体)のEFから。

中村「メフ®【ビーズ】は、ポリエチレン樹脂を30倍相当に発泡させて直径約3~4ミリの粒状にしたものです。一粒ずつが非常に軽くて柔らかくしかも弾力性があり、従来ビーズクッションとしてよく使われている発泡ポリスチレンのビーズに比べて、繰り返し圧縮されたときの回復が良く、ヘタリが少ないという特徴があります。クッション材として詰めれば、座ったときに体に追随するようにフィットして非常に心地良いものになります。ご評価をいただいて、昨今ではハイエンドなソファやオットマン、介護用のクッションなどの芯材としてご使用いただいています。

▲メフ®のビーズを金型で成形した板をグイッと曲げても亀裂が入ったり割れたりしにくく、もとに戻る。繰り返し圧縮された時の回復性が高いのはポリエチレン樹脂の特性。

メフ®のビーズは今回のクッションのように【ビーズ】のまま使われるだけでなく、金型成形してさまざまな用途でご使用いただいております。成形品になっても、薄くてもクッション性があり、割れにくく、繰り返し使えて、擦っても粉が出にくく、擦れ音も少ないといった特徴があります。ヘッドレストをはじめ、車の内装材としても採用していただいております。近年の電動化により、車室内もより静音化が進み、今まで目立ちにくかった「異音」への対策に皆さま苦慮されておられる旨お聞きしますが、金属部品と接する部分もメフ®なら走行中の擦れ音の発生が少なく快適です。またメフは高い緩衝性能を有しますので、自動車の部品としてだけではなく、物流資材の分野で広く採用され、製品を搬送するときの緩衝材として、また、繰り返し使っても割れにくいため、部品の通い箱としても長年ご使用いただいております。

▲物流資材としてメフ®のビーズを使って成形された製品例(通い箱)。

▲メフ®は他素材に比べて擦れ音の発生が少ない。
*EPS=発泡ポリスチレン、 EPP=発泡ポリプロピレン

▲メフ®成形例

▲メフ®は柔軟性があり、ヘッドレストをはじめ、車の内装部材に適します。

未来のクルマを想うことから、もっと快適で自由な空間が生まれる

本庄「AKXY2では、メフ®のビーズを中に詰めたクッションをスツールの脚の上に載せています。フワッとしていて座ると体がモチッと包み込まれてリラックスします。車の中でこのようなやわらかいものに腰掛けるというのは、かなり感覚的に新しい体験になるのではないかなと思っています。背もたれはなく自由に動かすことができるので、後ろのシートに腰掛けてクッションに足を投げ出してもいい。車から持ち出して外でくつろいでもいい。好きなように使っていただいて、使い方の幅を広げていってくださいというメッセージも込めています」

 

中村「今後メフ®が特にアピールしていきたいと思っておりますのは、環境対応の部分ですね。高発泡の為、そもそも樹脂の使用量は少ない、減容する事や、燃焼・サーマルリサイクル(熱回収)が可能。物流資材分野では、従来からメフは割れ欠けしにくい為通い箱等の繰り返し使用(REUSE)で環境面での貢献のお手伝いも出来てきたかと思っております。将来的にはさらに環境に配慮・貢献できるようにと考えております。同じ発泡ポリエチレンのボード(板)「サンテックフォーム®」においては「植物由来のポリエチレン樹脂」を原料とした発泡体の研究も進めており、昨年末(2021年12月)『サステナブル マテリアル展』に「サンテックフォーム®」バイオマスグレード(仮称 開発品)を出展させていただきましたが、反響が非常に大きく、皆さまの環境ニーズの高まりを強く感じました」

▲モビリティ戦略推進部 事業戦略グループ 本庄崇文

本庄「私からメフ®への期待としては、体に追随してフィットするものが今後シート本体やアームレストなどいろいろなところに採用されることです。未来の車はもっと快適で自由な空間になっていくだろうと思いますし、従来の車のシートももっと快適で自由なものができるといいなと思っています。

追随してフィットするという性質は面白い特徴だと思っていまして、人が座って心地よいだけでなく、モノを置いても安定するんですよね。もとのデザインを損なわずにモノを置ける場所になる。いま自動車業界のいろいろなところで流行っている『シャイテク*』という言葉があるのですが、『美しく一体感のあるデザインだけれど、そこには機能がありますよ』といった仕掛けを、メフ®のような素材で実現できないかな、提案できると面白いなと思っています。そういったことに関心を持ってもらえるような企業があれば我々も一緒に開発できたらいいなと…未来的な発想ですけれど」

(*テクノロジーがありありと存在を主張するのではなく、機能していない時は何もないツルツルの表面なのに触ると実はスイッチになっていて点灯するスマホなど、ハイテクがシャイで隠れているようなものを呼ぶ)

第3回は、AKXY2のコンセプトを表す3つのSの中でSustainabilityをテーマに搭載された旭化成の代表的な製品を取り上げ、込められた思いを聞きます。

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この記事は2022年5月13日に公開しました。

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