CMFとは?デザイン構成の要素、自動車産業での活用方法を解説
2025/02/21
CMFとは、ものの表面を構成する COLOR(色) MATERIAL(素材) FINISHING(加工)のことです。この記事では、CMFを決定する要素や、自動車産業での活用方法について解説します。自動車産業で、CMFが今後どのように発展するかについても解説しているので、参考にしてください。
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<目次>
CMFとは
CMFとはどのようなものか、概要と目的、伝統的な製品デザインとの違いについて解説します。
CMFの概要と目的
CMFとは、ものの表面を構成する、大切な3つの要素であるCOLOR(色)、MATERIAL(素材) FINISHING(仕上げ)それぞれの頭文字をとった言葉です。CMFデザインは、製品の構造や外観など人が見たり、触れたりする部分の色、素材、仕上げを入念に選択する過程を意味します。CMFには、製品の美しさや機能性、ブランドアイデンティティを高める目的があります。
見た目が美しく目を引くデザインは、消費者の注目を集め、感情的なつながりを生み出すことによる、ユーザー体験の高まりを期待できるでしょう。ものの表面を構成するCMFを意識することで、クオリティが高い製品を生み出せるメリットがあります。
五感のうち、視覚から多くの情報を得るため、CMFから受ける心理的な影響は大きいといえます。そのため、CMFは、商品を購入するか否かを決める大きな要因になります。
伝統的な製品デザインとの違い
伝統的な製品デザインとCMFデザインは、何を重視しているかに大きな違いがあります。伝統的な製品デザインは、機能性や耐久性、人間工学、使いやすさに重点を置いています。一方、CMFデザインは、実用性のみならず、製品の感性や感覚的な側面などが重要ポイントです。そのため、消費者の心に響く、視覚や触覚で惹きつける製品を作ることを意識しています。
CMFを構成する3つの要素
CMFは、以下の3つの頭文字を組み合わせたものです。
・C:COLOR(色)
・M:MATERIAL(素材)
・F :FINISH(仕上げ)
それぞれについて、以下で解説します。
色
自動車の車体やシートなど、さまざまな部分に、人の心に深く響く色が使われています。ボディの色1つひとつにメッセージ性があるため、さまざまな色を組み合わせることで、深いメッセージ性を伝えられるでしょう。異なる色を何層も組み合わせることで、光の状態や見る角度によって異なる効果を持った色合いに変化します。
素材
素材は、製品の表現や触感に影響を与えます。また、耐久性や耐候性、耐熱性、衝突安全性など、製品が持つ物理的な特徴は、使い勝手や重さなどにも影響を及ぼします。素材によっても、色の見え方は異なります。色をどの素材に乗せるかによって、さらに個性的な表現が可能です。触れたときの心地よさやユーザーがどのような感情を抱くかなど、総合的に考えて素材を決める必要があります。
仕上げ
表面仕上げは、機能性と耐久性において重要な役割を持っています。仕上げ加工の方法によって、色を際立たせる、深みを加える、触り心地を変えるなど、さまざまな影響を受けます。表面を平滑にするか、立体形状にするかによっても見え方や感触は異なるでしょう。
環境に優しい素材や仕上げをデザインに取り入れることも重要です。環境への影響を減らすだけでなく、消費者に環境意識の高さをアピールする効果もあります。
CMFを決定する過程
自動車産業において、CMFを決定する際の流れを、4つの段階に分けて解説します。
1.トレンドを分析する
消費者インサイト、市場トレンド、ブランドアイデンティティなど、トレンドを分析することで、何が求められているかが判断できます。新しい価値観や、消費者の価値観に合わせたラインナップが、ニーズを満たせる要素として挙げられます。
2.コンセプトを作成する
消費者のニーズと市場の動きを総合的に把握した上で、コンセプトを作成します。チームで共有し、コンセプトをもとに、色を決めます。コンセプトを作成した後、色や素材を使えば、自動車全体のコーディネートの具体化が可能です。自動車の個性を際立たせる表現になっているか、ユーザーがほしいと感じる仕上がりになっているかなど、検討を重ねます。
3.テストと評価を繰り返す
続いて、素材開発やデザイン検証を行います。テストを繰り返すことで、機能的要件、耐久性基準、法規制に準拠しているかが確認できます。物性要件や耐久性の要件をクリアする形に仕上げることが求められます。
4.製造する
テストと評価を繰り返した後、製造と実装に進みます。色、素材、仕上げの仕様が反映されているかを確認します。設計や工場と繰り返し打合せすることで、試作品との品質差を埋められます。
CMFの活用方法
CMFは、さまざまな産業に活用されています。主な産業と自動車産業に分けて、解説します。
CMFが活用されている産業
CMFは、インテリア業界、ファッション産業、パッケージ産業など、幅広い分野で活用されています。インテリア業界では、CMFが家具の美的魅力、快適性、耐久性などに影響を与えています。ファッション産業では、服やアクセサリーなどの色、素材、仕上げにCMFが重要です。
デザイナーは多くの色や素材、仕上げを使い分け、最新のトレンドやブランドのアイデンティティに合ったユニークな作品を生み出すことが求められています。パッケージ産業において、CMFは、消費者へのアピール方法の1つです。さまざまな商品が並ぶ棚で、いかに製品を際立たせ、ブランドメッセージを有効に伝えるかに重きが置かれています。
自動車産業における活用方法
自動車産業においては、CMFはボディやエアロパーツなど、自動車の外観とインテリアの両方に影響を与える、自動車製造において不可欠なものです。車体の色やシート表皮、インストルメントパネルの加飾など、人が目にしたり触れたりする部分の色や素材、触感、表面の仕上げに活用されています。ほかの産業と比較すると、デザインの範囲が広く、取り扱える素材が多いことが特徴です。
旭化成の自動車産業におけるCMFデザインの提案
旭化成では、CMFデザインでさまざまな提案をしています。ここでは、CMFデザインの一例を紹介します。
デュラノール™は、良触感、柔軟性、耐薬品性、耐擦傷性などポリウレタンに求められる性能を付与することが可能なポリカーボネートジオールです。カーシートなどの合成皮革、自動車内外装塗料、スイッチパネル等のソフトフィール塗料に活用されます。
合成皮革やソフトフィール塗料により得られる独特の質感は、ユーザーに高級感と独自性を伝え、製品の差別化をもたらします。また、耐久性に優れたデュラノール™を原料として用いることにより、長期にわたり質感を維持できます。
Thermylene® SoForm™は、射出成形のみで、自動車の内装部品に良触感やマット感を付与できるポリプロピレン複合材料です。これにより、柔らかな触り心地を実現しました。塗装工程をはじめとする後加工が不要となるため、CO2の排出量を削減できる可能性も考えられます。製造工程の簡略化とコスト削減も期待できるでしょう。
耐傷性、耐摩耗性が高く、長期にわたり、自動車内装部品の見た目を維持できる魅力があります。
CMFの最新動向と活用の未来
CMFは今度どのように発展していくのでしょうか。自動車産業の位置づけと発展を軸に、解説します。
現在の市場におけるCMFの位置づけ
CMFは、素材や質感、表現、触感に影響を与えます。1970年代以降、CMFは、自動車はもとより、電子機器など、さまざまな分野に順応していきました。新しい素材や仕上げの開発が進み、消費者の感動やワクワクなどの感情を引き起こすことで生まれる価値が、購入の大きな動機付けになる時代が到来しています。
また、サステナビリティへの取り組みが消費者の購入行動に大きな影響を与える時代を迎えつつあります。サステナビリティの表現も車の価値の1つです。環境問題への消費者の関心が高まるなか、持続可能で環境に優しい素材への需要も高まっています。
商品そのものを大切に消費するというサステナブルな消費志向の拡大が進んでいることもあり、持続可能な素材、環境に配慮したものづくりが求められています。
今後の発展可能性
自動車産業は、100年に一度といわれる変革期にあります。エンジンルームが小さくなる、インホイールモーターの導入、床下にバッテリーを置くことによる低重心化などから、遮音や難燃性能を含む素材の利用が大きなアドバンテージになりうるでしょう。
パワーユニットのEV化が進むと、今後はフロアも凹凸が減り広いフラット面が期待できるため、内装空間のデザインに大きな変化が生まれると考えられます。外装のスタイリングだけでなく、インテリアデザインとCMFへの関心も高まっています。今後、サステナブルな消費志向の増加に比例するように、環境配慮に関する素材開発が進むでしょう。
まとめ
CMFは、自動車産業において、ボディやエアロパーツ、シートなど人の目につき、触れる部分の選択に活用されています。CMFを意識するデザインは、消費者の心に響き、ユーザー体験を高める効果を期待できます。
旭化成では、車室内空間の価値を高めるソリューションとして、意匠性、サステナビリティ、快適性を重視しています。高外観を維持したい、植物由来の素材を使い環境負荷を減らしたい、ロードノイズを低減し、リラックスして過ごしたいなどの要望をかなえるCMFデザインを実現しています。詳しくは、以下のページをご覧ください。