World Rally Championship

Race Report

Round 10

トヨタGRのエバンス、
ホームグラウンドで逆転勝利

真夏のWRC恒例のイベントとして定着していたラリー・フィンランドが、世界中のコロナ感染拡大によって日程の変更を強いられ、今年は2ヶ月遅れの開催になった。競技は10月1日から3日までの3日間。昨年はイベント自体が中止になったので、日程の変更があったとは言え復活したことは喜ばしいことだ。参加する選手からは、「ラリー・フィンランドはWRCの中でも核となるイベント。昨年のキャンセルは残念だったので、今年の復活を喜んでいる」(RTE=エサペッカ・ラッピ)、「気温も下がってドライバーとしては歓迎だ。真夏のように太陽が照りつけないので体力的にも楽だし、路面の埃も少ないと思う」(トヨタ=ケイル・ロバンペラ)という声が聞かれた。ラリー・フィンランドはモンテカルロ・ラリーと並んでWRCの核をなす重要なイベント。雪に覆われた山岳路で戦われるモンテカルロ・ラリーに対し、湖と針葉樹の間を抜ける真夏の高速のラリーだ。50mを超えるジャンプも見られ、平均速度は130km/h以上、最高速度は200km/hを超える。ドライバーにとれば欠かせないイベントと言える。今年は70回目を数え、12戦行われる世界選手権の第10戦で、チャンピオン・タイトル争いに重要な戦いになった。

ラリー・フィンランドは、首都ヘルシンキから北へ200キロ余りのユバスキュラという街を中心に行われる。ユバスキュラはトヨタ・ガズー・レーシングの本拠地だ。今年、予定されていたラリー・ジャパンが中止になっただけに、「我々の第二のホームグラウンドであるフィンランドでは是非とも勝利を掴みたい」(トヨタ豊田章男社長)と、トヨタ・チームの士気は高かった。それもそのはず、フィンランドの前戦ギリシャ終了時点ではトヨタのセバスチャン・オジェが180ポイントを獲得してドライバー選手権でトップ、2番手にもトヨタのエルフィン・エバンスが136ポイントで付けており、タイトルに最も近いところにいるからだ。マニュファクチャラー・ランキングでもトヨタが397ポイント、ヒュンダイに57ポイントの差を付けている。ヒュンダイのドライバー勢はティエリー・ヌービルがドライバー選手権3位(130ポイント)でエバンスに迫るが、期待のオット・タナクが今シーズンはやや不調で選手権5番手。フィンランドでの巻き返しを狙っていた。

2年振りに開催されたラリー・フィンランドは、以前と比べてスケールがコンパクトになった。それでもスペシャルステージ(SS)の数は19、距離にして287.11kmになる。加えて金曜日にナイトステージといわれる夜間のSSが設けられた。ラリー前の試走は日中だけ。ドライバーはだれも高速のフィンランドのコースで夜間走行の経験が無く、不安を抱える者もいた。こうして第70回ラリー・フィンランドは10月1日、3日間の戦いの火蓋を切った。

ラリーはタナク、クレイグ・ブリーンの2台のヒュンダイi20クーペWRCのリードで始まった。トヨタ勢は出だしで足踏みをしたが、金曜日のナイトステージを境に流れが急激に変わった。その先頭に立っていたのが誰あろうエルフィン・エバンスだった。誰もが初めてという金曜日のナイトステージで強烈な速さを見せベテラン達を凌駕、その日の終了時点で3位にまで順位を上げたのだ。しかし、見所は土曜日の午前中のSSだった。勢いは止まらなかった。エバンスは4個所のSSをすべてトップで走りきり、軽々と先頭に躍り出たのだ。この時点でエバンスとトップ争いをしていたのはヒュンダイのブリーンとタナク。金曜日の時点では2人のヒュンダイドライバーが1、2位を独走、エバンスは5位に付けていたが、土曜日の4SSのベストタイムで一気にトップに躍り出て、最終的にタナクに14.1秒の差を付けて勝利をもぎ取った。エバンスにとれば今年2勝目。総合得点は166ポイントで、5位に入って選手権をリードするオジェに24点差と迫った。今年は残り2戦、逆転の可能性は十分にある。2位にタナク、3位にブリーンとヒュンダイ勢が入った。

エバンスの所属するトヨタ・ガズー・レーシングはラリー・フィンランドに参戦し始めた2017年以降、無敗の成績を誇る。ユバスキュラが本拠地という地の利を活かしての成績・・・というほどWRCは甘くない。真の実力、優れた技術力の賜だろう。

トヨタといえば、ワイルドカードでヤリスWRCを駆って参加したラッピが、見事4位に入って賞賛を浴びた。彼は2017年にトヨタを勝利に導いたドライバー。10ヶ月の間ラリーから遠ざかっていたにもかかわらず、相変わらずの腕前を披露した。6位、7位にMスポーツのフォード・フィエスタWRCが入った。

次戦は10月14〜17日のラリー・エスパーニャ(スペイン・ラリー)。フィンランドのグラベルと違いターマックでの争いになり、タイヤ選定が勝敗の鍵になる。そして、オジェとエバンスのチームメイト同士のタイトル争い。目が離せないとはこの事だろう。ハモンを食べながらシェリー酒を飲んでいる場合じゃない。

ライター

赤井邦彦

自動車雑誌編集部勤務を経て1977年に渡英、F1グランプリを中心に取材活動を行う。
1980年帰国、フリーランスのジャーナリストとして活動。F1グランプリ取材など多数。
1990年、株式会社赤井邦彦事務所設立、雑誌編集、広告コピー、WRCプレスオフィス、FIAプレス委員会委員などを経験。タイム誌アジア太平洋広告大賞受賞(コピー)。
2015年からMotorsport.com日本版の代表取締役・編集長。
FIA関連を含めて著書多数。図書館推薦図書など。

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