World Rally Championship

Race Report

Round 11

陽光のスペインでヒュンダイのヌービルが圧勝
タイトル争いは最終戦モンツァに持ち越し

スペインラリーの歴史

スペインのラリーがWRC(世界ラリー選手権)に認定されたのは1991年。以前はERC(ヨーロッパ選手権)の1戦だったラリー・カタルーニャとラリー・コスタ・ブラバが1988年に併合されて91年からWRCに。コスタ・ブラバはバルセロナの東に位置する長い地中海沿岸の名称。ところがその後、コスタ・ブラバで行われていたラリーは2005年にバルセロナの西に位置するコスタ・ドラダに移り、以来その地で開催されている。コスタ・ドラダとは黄金海岸という意味。ラリーの通称はラリー・ド・エスパーニャ。

ところで、スペインでラリーと言えばカルロス・サインツの名前がまず浮かぶだろう。1990年、92年の世界チャンピオン・タイトルをトヨタセリカで獲得している。WRC通算26勝。セバスチャン・ローブ、マーカス・グロンホルム、セバスチャン・オジェに次ぐ歴代4位の記録保持者だ。WRC活動を止めてからはダカール・ラリーなどに参戦しており、同ラリーで3度の総合優勝を経験している。息子のカルロス・サインツJrはフェラーリのF1ドライバー。

2021年ラリー・スペイン

2021年のラリー・スペインは10月15日から17日までの3日間に渡って行われた。2020年はCOVID-19の影響で開催が見送られたラリー・スペイン。2年振りの今年はリエゾンを入れた全行程1410.29km、280.46kmの17のスペシャル・ステージ(SS)を舞台にタイム争いが行われた。結果を先に述べればヒュンダイi20WRCに乗るティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組が、2位に入ったトヨタ・ヤリスWRCのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組に24秒1の大差を付けての勝利を上げた。

今年のラリー・スペインはいくつか興味ある見所があった。まず、17個所の全SSがターマック(舗装路面)で行われたことだ。実は2009年以前は全SSがターマックだったが、2010年から19年まではターマックとグラベル(未舗装)のミックス路面でコースが設定された。それが今年から再びターマックのみになったのだ。当然ながらターマックとグラベルでは使用タイヤが異なり、クルマのセッティング、運転の仕方も異なってくる。両者が混在したコース設定だと、チームにかかる労働の負担は大きくなる。その点、今年はタイヤメーカーにもチームにも歓迎されるイベントになったといえる。

しかし、ドライバーにとればシビアさは増したはずだ。タイヤの使い方、ラインの取り方がよりシビアになり、少しでもタイムを縮めるには小さなミスも許されない。本来ならタイム差は小さくなるはずだが、ターマックの得意なドライバーとそうでないドライバーの間ではかえってタイム差が広がる傾向にある。こういった要素も今年のラリー・スペインの結果に影響したといえるだろう。

ラリーは14日(木)の午前中にシェイクダウン、15日(金)から本格的なイベントのスタートでSS 3個所を各2回ずつ走行、16日(土)も同様にSS3個所を各2回ずつ走行したあと短距離の市街地ステージでのトライアルも行われた。最終日17日(日)はSS2個所を各2回ずつアタックするが、最終ステージはボーナスポイントがつくパワーステージが設定され、最後まで激しい争いが予想された。

ラリーは初日15日からヒュンダイのティエリー・ヌービル組がリード、ラリー・フィンランドを制したトヨタのエルフィン・エバンスが2番手に付けた。ヒュンダイはスペインに強く、19年には1、3、4位と上位を独占しており、今年も初日から自信に満ちた走りでトヨタ勢に差を付けた。15日が終了した時点では首位ヌービルと2位エバンスの差は僅か0秒7。しかし、2日目が終わった時点でその差は16秒4まで広がった。エバンスが決して遅いわけではないが、ヌービルのスピードがそれを凌駕したのだ。それでもエバンスはタイトル争いのライバルであるチームメイトのセバスチャン・オジェに22秒3の差を付けて、2日目を終えた。オジェはこの日、エンジンがストールするアクシデントがあり、エバンスを追い上げることが出来なかったのだ。

そして最終日の17日、ヒュンダイのヌービルはトヨタのエバンスとの差をさらに広げて、堂々の優勝を飾った。2人の差は24秒1まで広がっていた。3位にはオジェを逆転したヒュンダイのダニ・ソルド組が入った。ヌービルはこの勝利でWRC15勝目。ヒュンダイは20勝を記録した。また、今ラリーでは全17SS中14SSを制し、ターマックでの俊足振りを見せつけた。ヒュンダイの圧勝といえた。

ところで、今回のスペインで決着がつくと思われていたタイトル争いは、最終戦ラリー・モンツァ(イタリア)までお預けとなった。最終戦ではトヨタのチームメイト同士エバンスとオジェの間で熾烈な争いが展開されることになる。タイトル争いと言えば、マニュファクチャラーの争いも最終戦までもつれ込むことになった。スペインが終わってトヨタ474点、ヒュンダイ427点。ラリーの性格上、ヒュンダイ逆転の可能性も残されている。

最終戦は日本ではなくイタリア!

11月19〜21日に行われる2021年のWRC最終戦ラリー・モンツァは、本来行われるはずだったWRCラリー・ジャパンの代替イベントとして開催される。2020年も同様の措置がとられたが、2年連続でWRCを日本で観戦出来ないのは残念きわまりない。それでもラリー・モンツァは有名なモンツァ・サーキットを走行するセクションも設けられ、興味あるイベントになる。最終戦までもつれ込んだタイトル争い、その熱は日本まで伝わってくるに違いない。

ライター

赤井邦彦

自動車雑誌編集部勤務を経て1977年に渡英、F1グランプリを中心に取材活動を行う。
1980年帰国、フリーランスのジャーナリストとして活動。F1グランプリ取材など多数。
1990年、株式会社赤井邦彦事務所設立、雑誌編集、広告コピー、WRCプレスオフィス、FIAプレス委員会委員などを経験。タイム誌アジア太平洋広告大賞受賞(コピー)。
2015年からMotorsport.com日本版の代表取締役・編集長。
FIA関連を含めて著書多数。図書館推薦図書など。

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