人とくるまのテクノロジー展

2022 YOKOHAMA

Automotive Engineering Exposition 2022

出展レポート2022 5/25〜27

自動車産業に関わるエンジニアのための自動車技術専門展として1992年に始まり今年30年目を迎えた『人とくるまのテクノロジー展』。“その先のテクノロジーが見える”と題した2022年は、3年ぶりにリアルな会場展示が復活し、オンラインとの初ハイブリッド開催となりました。海外渡航などにはまださまざまな困難がある中ですが、横浜展示会の会場パシフィコ横浜には国内自動車メーカー9社をはじめ国内外の自動車技術関連企業484社が出展し、5月25日から3日間、延べ4万3665名の来場者で賑わいました。本稿では、旭化成コンセプトカープロジェクトの3代目AKXY2の出展レポートとともに、見どころ満載だった会場の中から特に注目した他社の展示をご紹介します。

AKXY2
人をつなぐ。未来へつながる。

旭化成の新コンセプトカーAKXY2をリリース!

旭化成が、初代コンセプトカーAKXYを発表したのは2017年。2019年には未来の車室空間をイメージしたAKXY PODを公開し、その後間もなく構想がスタートした3代目のAKXY2ですが、コロナ禍で幾多の難題に遭遇しました。検討と同時進行する社会の変化はAKXY2のコンセプトに大きな影響を与え、納得がいくまで何度もデザインの練り直しを行いました。また、組み立て段階では半導体チップ不足や国際紛争の影響を受けてパーツの供給が滞るなど困難に見舞われましたが、当初の計画通り無事完成した姿を横浜会場でお披露目することができました。リアルに見て乗って触って体感していただきたいという初代AKXY以来の方針を受け継ぎ、AKXY2も感染防止対策のもと、希望してくださった方には整理券をお配りして順番にご搭乗いただきました。

モビリティの価値を高める
『3つのS』を体感してもらう

AKXY2がコンセプトの柱としているのは、これからのモビリティにとってとても大切で、その価値を高めるために不可欠な要素と私たちが考える『3つのS』=Sustainability(持続可能なクルマづくり)、Satisfaction(クルマの満足度向上)、Society(社会とクルマのつながり)です。このテーマを体現する旭化成の自動車関連製品・技術をAKXY2で統合的に表現し、代表12アイテムをパネル展示にピックアップしてご紹介しました。すでに豊富な実績のある製品から次世代に向けた最新の研究開発まで、ぜひご注目いただきたいアイテムです。

透明キャノピーの開放感は見た目以上

AKXY2の未来的なデザインは遠くからも目を引きます。プレゼンテーションではメタリックなエクステリアのボディから透明カプセルのようなキャノピー部分がパカッと切り離されて上へ開き、ボディの一部が手前へ倒れてステップとなる一連のトランスフォームに、来場者から「おお!」と歓声が沸き起こりました。動きも含めたAKXY2の独自性は、移動体である自動車が最も長い時間を費やしているのが実は“停車中”であるという事実に着目して生まれたもの。居室空間のプロフェッショナルである旭化成グループの住宅部門の知見やアイディアも反映されています。
実際にAKXY2に乗ってみると、透明キャノピーは見た目以上の開放感があります。プライベートな空間でありながら360度全方位に開かれ社会とつながる、というコンセプトは中にいる時だけでなく外観からも感じられ、AKXY2内に座っている人たちが向かい合って談笑する姿は街角のカフェのように楽しげに見えました。

空気の見守り、
温熱など体感できるくつろぎの仕掛け

AKXY2の車内には、旭化成グループのSenseair社による最新鋭小型CO2センサーが搭載されています。センサーに連動してインパネに表示されるCO2濃度は、換気するタイミングの目安となります。
壁面の布地は旭化成グループのSage社のもので、朝日をイメージした美しいグラデーションがインクジェットプリンタの染色によって再現されています。
車内に設置されている2つのシート(ヒーティングシート、クーリングシート)はそれぞれスイッチ1プッシュで温熱と空冷を体感できる仕組みで旭化成の製品と技術が活かされています。ヒーティングシートは発熱テキスタイルの上に表面意匠性を持たせたSage社の人工スエードを貼り付けています。一方、クーリングシートは通気性の高い3次元立体編物フュージョン®を座面に用い、座面の内側から涼風が伝わる構造となっています。いずれもスイッチオンにしてからすぐに体感できるのが特徴です。旭化成のチップによるボイスコントロール機能も備えており、オン/オフの指示は音声でも可能です。床面を見るとマグネットのドットが並んでいて、これらのシートやスツールをドットに沿って着脱できるため、レイアウトをカスタマイズすることもできます。壁面に巡らされたスリットにはめられたサイドテーブルも、外したり別の位置に付け替えることができて、カスタマイズの一端を体験できます。

AKXY2搭載製品の展示

AKXY2の公開に合わせて展示ブースでは、インテリア・サステナ塗料・インパネ周りの3つのカテゴリー別にコーナーを設け、それぞれに紐づく代表的なAKXY2搭載製品(計12点)を展示。各製品担当者より紹介を行いました。

INTERIORインテリア

インテリア

自動運転時代のクルマを想定し、操作ハンドルなどのない未来的なデザインです。肌触りの良さ、清潔さ、デザイン性などそれぞれの特性を持つ素材を各部位に合わせ採用し、自宅の部屋がそのまま外に移動するような快適空間を創出しています。

SUSTAINABLE COATINGサステナ塗料

サステナ塗料

見た目の美しさやデザイン性、耐久性だけでなく、サステナビリティを重視した素材を採用。クルマの製造段階で環境負荷の高かった塗装工程を改善する硬化剤、樹脂によるガラス代替を叶え軽量化を実現するコート剤など、さらなる開発を進めています。

INSTRUMENT PANELインパネ周り

インパネ周り

新規光学樹脂AZP™と高い漆黒性が特長のデルペット™ PBシリーズをディスプレイ回りの材料として提案。インパネには車載CO2センサーで計測したCO2濃度が表示されます。

AKXY2搭載製品の展示

Sustainability

持続可能なクルマづくり

旭化成は新素材や新たな技術開発といった「ものづくり」の観点から自動車産業のサステナブル化に貢献していきたいと強く考えています。

旭化成は新素材や新たな技術開発といった「ものづくり」の観点から自動車産業のサステナブル化に貢献していきたいと強く考えています。

デュラネートTM

デュラネート™

高耐候性ウレタン塗料及び樹脂用硬化剤であるデュラネート™は、旭化成独自の「低粘度化」と「低温硬化」を実現しています。低粘度のため溶剤が少量で済み、低温硬化により使用エネルギーを減らせるので、塗装工程において長年の課題だった有害なVOCの削減やCO2の排出抑制に貢献します。AKXY2ではエクステリアの外装塗料やサイドテーブルのクリアコートとして使っています。

Satisfaction

クルマの満足度向上

モビリティは単なる移動手段ではなくなりつつあり、ますます「満足」への要求が高まってきています。AKXY2では快適性など普遍的な価値に対して、五感で感じる満足や空間のカスタマイズなど、斬新な発想や技術で応え具現化しています。

モビリティは単なる移動手段ではなくなりつつあり、ますます「満足」への要求が高まってきています。AKXY2では快適性など普遍的な価値に対して、五感で感じる満足や空間のカスタマイズなど、斬新な発想や技術で応え具現化しています。

フュージョン®

フュージョン®

植物由来原料・再生原料を用いた3次元立体編物であるフュージョン®は、通気性が良く耐久性にも優れていることが特長です。これらを活かしてAKXY2ではフュージョン®をクーリングシートの座面として活用し、座面から風が吹き出す機能を搭載しました。夏場の長時間ドライブなどでも蒸れずに快適なシートが実現します。

Society

社会とクルマのつながり

モビリティは密を避けた「プライベートな空間」であると同時にさまざまなリアルな体験へと導いてくれるもの、社会との接点でもあります。AKXY2の透明キャノピーやドアのユニークな開閉、場面に応じてカスタマイズ可能な内装空間などは、未来のモビリティは今よりもっと密接に社会に溶け込み、人と人がシームレスにつながるというイメージを形にしたものです。

モビリティは密を避けた「プライベートな空間」であると同時にさまざまなリアルな体験へと導いてくれるもの、社会との接点でもあります。AKXY2の透明キャノピーやドアのユニークな開閉、場面に応じてカスタマイズ可能な内装空間などは、未来のモビリティは今よりもっと密接に社会に溶け込み、人と人がシームレスにつながるというイメージを形にしたものです。

樹脂グレージング用ハードコート剤

樹脂グレージング用ハードコート剤

樹脂の課題を克服しガラス窓の代替ができるように旭化成が開発したコート剤です。ポリカーボネート樹脂に本コート剤を塗布することで、傷から守り透明性を維持することができます。これによってAKXY2を象徴する360度見渡せる曲線デザインの透明キャノピーが実現できました。

AKXY2搭載製品一覧

Asahi Kasei(旭化成)×(かける)You(あなた)

あなたならAKXY2をどう使う?会場でいただいたお客様の声

皆様と一緒にモビリティの未来を創っていきたいという思いから『Asahi Kasei(旭化成 )× You』→AKXYと付けられた名前の通り、AKXY2プロジェクトは旭化成だけで完成するものではなく共創してくださるあなたが必要です。
横浜会場では、ご来場の皆様にアンケートをお願いしてAKXY2について感想をお聞きしました。いただいた声をいくつかご紹介します。

子どものころに映画の中に登場していた乗物みたい

車というよりリビングにいるみたいですね

こんなに一瞬で冷えるなんてすごいですね
(フュージョン®のシート)

いいですね。特にドアの開け方がかっこいい!
なんか実車で再現してみたくなりました。

クルマは移動手段としてだけではなく、停車中のプライベート空間としての用途へと拡がりつつありますよね。
キャノピーの昇降とか面白いアイディアだと思います。

内装やパーツの配置をカスタマイズできることがユーザーにとってのクルマの価値を高めると思います。

クルマが家の内外で暮らしの一部になる時代はすぐそこなんだなと感じました。

Asahi Kasei SELECTIONS

会場で注目した他ブースの
『3つのS』 みどころ7選

『人とくるまのテクノロジー展』の醍醐味は、完成形のクルマをエンドユーザーに提供する自動車メーカーと、部品・部材・システムや設備などに関わる多種多様なサプライヤー、クルマの開発からライフサイクルの各工程にまつわる事業者等が一つの会場に軒を並べているところにあります。その交流から意外なケミストリーが起こり、新たなイノベーションが生まれることも…。
ここからはAKXY2が考えるクルマの価値を高める『3つのS』=Sustainability(持続可能なクルマづくり)、Satisfaction(クルマの満足度向上)、Society(社会とクルマのつながり)の観点から、さまざまな次元で3つのSを追求していて特に印象深かった7社のブースの展示内容をご紹介します。

 

Sustainability

先見のケナフ
植物由来の自己修復力を車体に?

トヨタ紡織株式会社

トヨタ紡績は、サステナビリティを強く打ち出していたブースの一つです。中でも私たちは植物由来の素材に注目しました。生育が早く成長時のCO2吸収能力も高いとされる一年草ケナフに由来した自動車部材は、すでに20年前から高級車への採用実績があるそうで、先見性が際立っていました。ケナフ基材は丈夫で軽量、クルマのライフサイクル全体のCO2排出量低減に有効とのことです。また新開発の “自己修復ポリマー”はとても面白い樹脂材料でした。由来は植物の種油で、自己修復機能を付与したミラクルな樹脂です。実際にサンプル片で体験してみましたが、引きちぎっても押し付ければまた合体するのはとても不思議な感覚でした。

 

Society

異常時にクルマが副操縦士となり、
ドライバーの安全を確保

マツダ株式会社

自動運転技術をどのように社会に取り入れていくかという課題は、クルマの社会的な役割や存在意義、テクノロジーの倫理などさまざまなテーマを考えるきっかけになります。「人間中心」の理念を掲げるマツダは「コ・パイロット(Co-Pilot)」という発想で、いざという時に副操縦士となって人を助け不慮の事故を防いでくれるドライバー異常時の安全確保技術を提案。ドライバーの視線や運転操作などをセンサーで見守り、居眠りや身体異常を検知したらシステムが運転を支援して安全な場所に停車するところまでを視野に入れています。実証実験を重ねて今秋から量産車に実装されていくとのこと。さらに今後は、病院との連携や、集積したデータを日常的な健康管理に活かすなど進化の可能性が広がっています。

 

SustainabilitySatisfaction

環境への意識が高いZ世代に向けたメッセージ

豊田合成株式会社

環境への意識が高く自分らしさを重視するZ世代の若者層をターゲットにしていた豊田合成。ブース中央に置かれた“サステナブルマテリアルカー”の中で特に注目したのは、「地域と繋がるクルマ」というコンセプトに対応した銀杏の殻由来のバックフックです。銀杏は同社の工場がある愛知県稲沢市の特産品。地域の廃棄物も有効に活用するという方針によって、意外なものが自動車用材に変身する意義と楽しさを感じます。
ブース担当の方にお話を伺うと、作る者の責任として廃棄後まで見据えて研究開発を行っているとのこと。先進技術を用いたパーツにも寿命があり、これから廃材がどんどん増えてくる、その先をどうするかぜひ皆さんと知恵を絞りたい、と。「サプライチェーンとして海外から一度日本に入ってきた資源はずっとリサイクルして使い続けられるようにしたい」という言葉が心に残りました。

 

Satisfaction

指揮者のように非接触ジェスチャーで操作する

株式会社東海理化

「人をとらえ、意思を読み取り、人に応える」というコンセプトで東海理化の先進テクノロジー(センサー・AI・アルゴリズム)を体感できる “インテリジェントコックピット”に乗ってみました。面白かったのが非接触型のシステムです。モニターを操作したい時に手のジェスチャーに反応してモニターが近づいてきたり、車内でモノを探す際に手を伸ばしたところにスポットで照明が当たったり、天井近くで手をヒラヒラと扇ぐように動かすとガラスルーフが開閉するなど、ものに触れることなく動作させることができます。人の手の動きを読み取るのは骨格を検知する技術で、全身を捉えれば工場の作業管理などもできるとのこと。「どれだけ人に“楽”をしてもらえるように先んじて検知するかを考えている」というお話も興味深く伺いました。

 

SustainabilitySatisfaction

広島名産の廃材も新素材に
シャイテクには未来感

ダイキョーニシカワ株式会社

“FUTURE, WITH PLASTIC.〜プラスチックと未来へ〜”というキャッチフレーズが掲げられたダイキョーニシカワ。さまざまな自動車用樹脂部品や技術が紹介されていました。デニムの廃材・牡蠣の殻・モミ殻といった特に地元広島の暮らしに身近な廃材と樹脂を混ぜた新素材は、原料の色やテクスチャーをデザインに活かす工夫が凝らされ親しみを感じるとともに、樹脂の可能性を感じました。2030年の実装を目指して作られた次世代インテリアコンセプトモデルでは、指で表面を軽くなぞるだけで操作パネルやモニター映像が内装表皮を透過して現れ、使用しない時には消える、いわゆるシャイテクと呼ばれる仕掛けを体験しました。未来的なデザイン、新たな空間の快適性など次世代車の楽しさを想像できる展示内容でした。

 

SustainabilitySociety

“都市で森を走らせたい”という思い

トヨタ車体株式会社

カーボンニュートラル実現に貢献する超小型BEVコムス、燃料電池流路部品の技術との3本柱で取り上げられていたのが植物材料を用いた製品づくり。材料の採取からライフサイクル全体でCO2排出量を抑制できるという植物材料について担当の方にお話を伺いました。地元で採取されたスギの間伐材を配合した樹脂材料は、もともと国内向けの車種に日本発の材料を使おうと研究開発されたとのこと。海外の車には海外の木材、それも極力工場に近いところから採ってきたものを使う方針。興味を持った欧州企業などに乞われてプレゼンすると、地産地消の点が高く評価されるのだそうです。「木材は誤解されがちだけれど実は耐熱性が高く、軽量のため、あまり知られていないところに地味に使われているんです。自動車の中にそういう部品がたくさんあれば“森を走らせる”ことになる。たくさん作って、森を都市で走らせる一方で、森には木を植えて、私たちの身の回りにどんどん緑が増えていく…というふうになりたい」と夢を語ってくださいました。

 

Satisfaction

モーターをタイヤに組み込み空間を最大化する

日立Astemo株式会社

日立Astemoの電動パワートレインシステム展示ゾーンに、広くて快適な移動空間を提供するためのアプローチとして “インホールモーター”が紹介されていました。モーターをタイヤのホイールの中に組み込んでしまえば、車室空間が広がり、車体デザインの可能性も広がります。また回転エネルギーをモーターからホイールへダイレクトに伝えられるので、効率的なエネルギー利用ができるという優れもの。担当の方にお話を伺うと、現状では、路面からの振動に対する信頼性向上や、モーターとホイールが一体化することによる課題など、クリアすべき技術的なハードルがいろいろあるそう。将来訪れるであろう自動運転時代のEVにこのインホールモーターが活かされるよう、実証実験を続けていきたいというお話に、未来からの視座を感じました。

Creating for Tomorrow

Creating for Tomorrow

AKXY2がコンセプトの柱としている『3つのS』=Sustainability(持続可能なクルマづくり)、Satisfaction(クルマの満足度向上)、Society(社会とクルマのつながり)の視点で会場を巡ってみると、同じテーマでも着目している点は企業によって異なり、それぞれのアプローチがありました。一つひとつのテクノロジーの背景には多くの人がいて、各々の思いが込められている…いつの時代もクルマがどれほどたくさんの技術を集め、人々の夢をカタチにしてきたかあらためて気づかされます。自動車業界全体が100年に一度の大変革期にあると言われる今、この激動の時代を支え牽引していくのも技術のチカラ。旭化成グループも材料開発をはじめとする幅広い技術のチカラでその一翼を担っていきたいと思っています。そして、より良い未来を共に創ってくださるYou(あなた)を探しに、これからもAKXY2とともに出かけていきます。

横浜会場ではたくさんの方にご来場いただき、
ありがとうございました。
旭化成は「人とくるまのテクノロジー展2022 NAGOYA」
のオンライン展示
ONLINE STAGE2にも参加いたします。

人とくるまのテクノロジー展 2022 NAGOYA 人とくるまのテクノロジー展 2022 NAGOYA

人とくるまのテクノロジー展
2022 NAGOYA

Automotive Engineering Exposition 2022

ONLINE STAGE220226/29(水)〜7/5(火)

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