vol.02 特集テーマ「Sustainable Mobility」

正しい利用で、空飛ぶクルマが環境に優しい乗り物に

空飛ぶタクシーでラッシュアワーの交通渋滞の上をひとっ飛びーーそんなSFのような世界の実現に向けて、現在多くの企業やスタートアップが試作車の開発に取り組んでいます。例えば、電気式の自律型空飛ぶクルマのテスト走行を進めているCora社は、商用化に向けた一歩としてニュージーランド航空との提携を開始。ボーイングは自社の自動運転エアタクシーのテスト飛行を実施。あのUber社も2023年までに空飛ぶクルマによるサービスを開始する計画を発表しています。

これらの試作車は電気式であり、飛行中に温室効果ガスを放出しませんが、それでもバッテリー充電のための電気を生産、利用することは環境コストになります。しかし、近い将来実現する空飛ぶタクシーは、ヘリコプターのようにホバリングし、飛行機のように滑空できるものとなり、エネルギー効率が非常に高い乗り物になるかもしれません。ただしそれは、相乗りして長距離移動にのみ使用する場合に限られますが…。

▲Uber社のフライングカー構想をイラストで再現したもの。Uber

これはミシガン大学の科学者たちが最近行った、地上を走行する車と空飛ぶクルマとのエネルギーコストの比較検討による結果をもとにした予測です。

この研究の執筆者の一人で、同大学のCenter for Sustainable Systems責任者でもあるGregory Keoleian氏はこう語ります。「車両を持ち上げるのに必要なエネルギー強度を考えると、(空飛ぶクルマが)こんなにも競争力を持つものなのかと驚きました」。空飛ぶクルマの動力の中核をなすのは、基本的には車両の両翼に沿って搭載された複数の小さなプロペラによる分散型電気推進システムです。このシステムの使用により、滑走路がなくても垂直離着陸でドローンのように動き回ることができます。

空飛ぶクルマの実現にどのようなエネルギーが必要となるかを理解するため、科学者たちは他の科学論文や業界レポートをあたり、入手可能なデータを使用しました。ここで想定されたモデル車両は、運転手が1人と同乗者が4人まで乗せられ、高度1,000フィート(305メートル)で飛行し、時速は最高150マイル(241キロメートル)まで出せる車両です。この飛行車両と比較する2台の車は、1台が1ガロン(3.8リットル)あたり34.1マイル(55キロメートル)を走行するガソリン車、もう1台が1ガロン(3.8リットル)あたり108.5マイル(175キロメートル)を走行する電気自動車です。科学者たちは、この3台の車両を3マイル(5キロメートル)から155マイル(249キロメートル)の距離で走行させ、エネルギー効率を比較しました。

『Nature Communications』で発表されたこの調査によると、22マイル(35キロメートル)未満の短い移動では、ガソリン車と電気自動車がどちらも飛行車両よりエネルギー効率が高いという結果が出ました。アメリカ人はほとんどの場合短い距離しか運転せず、通勤距離の平均は11マイル(18キロメートル)です。短距離の移動では、エアタクシーはホバリングばかりすることになり、その間に多くのエネルギーを消費します。

しかし長距離移動では、エアタクシーの方がエネルギー効率において上回りました。62マイル(100キロメートル)をノンストップで移動する場合、ガソリン車と比較してエアタクシーの方が、温室効果ガス排出量が35%少なかったのです。しかし電気自動車と同じ距離で比較した場合、エアタクシーの方が、温室効果ガス排出量が28%多い結果となりました。ただし、このシナリオは乗客が考慮されていません。エアタクシーに4人で乗車すると想定した場合、平均乗車人数が1.54人である他の二車両と比較すると、エアタクシーの方がずっと環境に優しいと言えます。62マイル(100キロメートル)走行の場合、乗客1人あたりに発生する排出量を基準に考えると、最大人数の乗員を乗せたエアタクシーは、ガソリン車よりも片道あたりの排出量が52%少なく、電気自動車と比較しても6%少なくなります。

この結果からわかるのは、空飛ぶクルマには、ある種の理想的かつニッチな需要があるということです。一言で言えば、相乗りによる長距離移動です。ほかにも、混雑した地域や、目的地に直行する道がない地域でも役立つかもしれません。「デトロイトからクリーブランドに(エアタクシーで)飛んで行く場合、水上をダイレクトに移動できますが、地上を走る車の場合はエリー湖をぐるっと回らないといけません」とKeoleian氏は言います。

南カリフォルニアなど、悪夢のような通勤ラッシュにおいて、エアタクシーが実用化すれば時間を節約できます。ラッシュアワーにアーバインからマリブまで運転すると最大3時間半もかかってしまいますが、エアタクシーだとわずか27分で移動できます(エアタクシーがそれほど急速に普及せず、エアタクシーによる渋滞などが発生しないと仮定します)。「地上を移動する場合と比べて、飛行する場合は移動時間を最大80%短縮できます。単純に1,000フィート(305メートル)上空を移動する方がはるかに快適です。高速道路で大型トラックの後ろに立ち往生する、といった煩わしさもありません」。こう述べるのは、この研究の筆頭著者であり、持続可能なシステムを研究する大学院生のAkshat Kasliwal氏です。

相乗りを奨励することは、エアタクシー会社にとって良い結果をもたらします。「民間航空会社のオペレーションと同レベルでの高い乗車率を維持することが非常に重要です。満席に近くなるほど、収入が増えて収益性が高くなります」と、同調査の共著者でビジネスの持続可能性を研究する大学院生のJim Gawron氏は述べます。したがって、このビジネスモデルでは、より持続可能な相乗り移動が求められていくでしょう。

研究者たちの望みは、ハイテク企業が今回の調査によるフレームワークを使用して試作車を評価することです。エアタクシーは早ければ2023年までに飛行を始める可能性があるため、その影響(プラス面とマイナス面)を考慮することが重要です。持続可能性の観点から、Keoleian氏はこの新しいサービスによって、職場から離れた場所に住むことが助長されてはならないと指摘します。「(エアタクシーが)スプロール現象のような状況を推し進めてしまうのは望んでいません」。

温室効果ガス以外にも考慮すべき要素はたくさんあります。

今回の調査では、(鉱業、生産、輸送、燃料使用などに伴う)エネルギー関連の排出量についてさまざまな車両を比較しましたが、機械の製造や廃棄による環境への影響までを含めた全体像を示すことはできませんでした。チームがモデル使用した空飛ぶクルマは、一般的なセダンよりも軽量でした。材料が少ないということは、通常であれば環境への影響が少ないことを意味します。ただし、材料の種類も重要になってきます。「軽飛行機でよく使用されるカーボンファイバーは製造時に環境コストがかかります」とKeoleian氏は付け加えます。

安全な移動を確実に行うための規制を実施することも、この新しいテクノロジーの悪影響を減らすための鍵となります。「空飛ぶクルマが『宇宙家族ジェットソン』のように飛び回ってしまったら、それはひどい視覚的な公害となります」とKeoleian氏。は述べています。Uber Elevate社のようなハイテク企業が設計を進めている中、同チームはこうした影響について考慮してほしいと考えています。Keoleian氏は「開発を進める企業に、私たちの調査結果や推奨事項を理解してもらうことがとても重要なのです」と述べています。

 

この記事はPopular ScienceのUla Chrobakが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

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